山椒は小粒でもぴりりと辛い⇒『ドラゴンボール』登場キャラの意外な“共通点”とは

ドラゴンボール』登場キャラの意外な“共通点”とは

かめはめ波元気玉気円斬舞空術…。いろいろな技があるが、かめはめ波だけでも撃てたらなあと子供の頃、想いに耽ったことがある人は多いのではないだろうか。

 『ドラゴンボールのマンガ学』(彩流社/刊)では、テキストとしてジャンプコミックスの『ドラゴンボール』全42巻を使用し、『ドラゴンボール』の概要と梗概、物語論、登場人物の分析、さらにはドラゴンボールの言語やネーミングなどを見崎鉄氏が批評していく一冊だ。

 マンガにおいて大切な要素の一つが登場人物だが、本書では、敵味方さまざまなキャラクターを解説しながら、『ドラゴンボール』の世界を分析する。

 例えば、フリーザは変身タイプの宇宙人で、第一形態から第四形態まで変身する。第二形態では、身体が2、3倍になり、屈強な肉体になる。第三形態では、顔がエイリアンのようになる。第四形態では、一転、余分なものを削ぎ落としたさっぱりした方向に変化する。しかし、第四形態のフリーザはとても強い。見かけと実力は比例しないのだ。

 この「人は見かけで判断できない」ということは、『ドラゴンボール』を通してキャラクターの特徴になっていると見崎氏は分析する。第23回天下一武道会で登場し、頼りなさそうなおじさんに見えるが実は強いシェン(神様がのりうつっていた)や、身体が大きく顔に傷跡があり、一見怖いが心は優しいレッドリボン軍の人造人間8号、さらに見崎氏が「人造人間8号のシリアスな反復」と評する人造人間16号(いかつい外見とは反対に、小動物や自然を愛する心を持つ)など、そうしたキャラクターは思い返せば次々に出てくるのではないだろうか。

 また、さらに見崎氏はドラゴンボールの登場人物の強さの傾向において「体の大きさ」と「強さ」には相関関係があると指摘する。例えばナッパはべジータよりも身体がはるかに大きく屈強に見えるが、その実力は劣る。また、魔人ブウは「縮んだ」あとのほうがずっと強く描かれている。そして実は、この小さい者が強い(優れている)という発想は日本のマンガではおなじみだと見崎氏は指摘する。

 少年ジャンプに最終話が掲載されてから16年経つが、いまだに『ドラゴンボール』の人気は衰えることを知らない。それは何度読み返しても新たな発見があるという魅力があるからではないだろうか。



※ 日本の美学に山椒は小粒でもぴりりと辛いがあるんだろうね。