中国進出の際は、注意。「高級車を質屋に入れてカジノで遊ぼう」中国レンタカー業界を悩ませる「借りパク」問題

中国で現在、急成長を遂げているのがレンタカー業界。しかし、中国ならではのとんでもない悩みがあるという。2012年3月20日南方都市報が伝えた。

■中国レンタカー業界の悩み

中国レンタカー協会の統計によると、同業界は年率20~30%ペースで成長を続けている成長産業。2015年にはレンタカーの数は30万~40万台、営業収入は180億元(約2340億円)に達する見通しだ。前途洋々に思えるレンタカー業界だが、現在、関係者の頭を悩ませている問題が存在する。それは「借りパク」。借りた車を質屋に入れて、その金を持ったままドロン、というひどい話である。

先日、広東省深セン市で開催された全国レンタカー業界連盟大会では、この借りパク問題が議題として取り上げられた。凌新功会長によると、この半年で40~50台は被害が出ているという。中でも最大の事件となったのが広東省梅州市の事件だ。


■高級車30台の借りパク事件

昨年末のこと、黄という男が深圳市のレンタカー会社8社から30台以上もの高級車を借りだした。それを梅州市の質屋に入れて金に替えていたという。レンタカーにはGPSが取り付けられていたが、すでに取り外しずみ。レンタカー会社8社による必死の捜索が続いたが、なかなか黄を捕まえることはできなかった。

黄の身柄が確保されたのは年の瀬も押し迫った12月30日。なんと梅州市の質屋が返済を遅れた黄を捕らえたためだっという。なんとも切ない話なのが、黄は元レンタカー会社経営者だったということ。よもや同業者に裏切られるとは思わず、大変なことになってしまった。黄は借りパクされて会社がたち行かなくなり、盗まれるほうから盗むほうへと鞍替えしたのだという。


■法律の穴と悪質質屋

梅州市の事件ほどの規模はさすがに珍しいが、レンタカー業界で借りパク被害は珍しいことではないという。広東省では、「広州市で車を借りて、珠海市で質屋に入れて、マカオのカジノで一勝負」ということがままあるのだとか。

悩ましいのは法律の穴だとレンタカー業者は言う。貸出期限が来ていないうちは窃盗とは断定できず、なかなか警察が動けない。かといってまごまごしていると、車は転売に次ぐ転売が繰り返され、取り返すことは困難になる。

結局はレンタカー会社自らがGPSの記録などを頼りに取り返しに行くしかないのだとか。停車してある車を「盗み返してくる」こともあれば、仕方なく質屋に金を払って取り返すケースもあるという。

もう一つの問題は悪質な質屋が多いことだ。レンタカーを換金しなければ借りパク犯罪は成り立たないが、中国の質屋業界には悪質な業者も多く、偽造証明書をたいして確かめることもなく、車をそのまま担保に認めてしまうことが多いのだとか。


■退役軍人を雇って対策チームを

こうした状況にレンタカー業者も自己防衛の対策を取り始めている。借りパク歴など問題のある顧客のブラックリストを作り、業界内で共有するのもその試みの一つ。ブラックリストにはすでに数十人の名前が記載されている。

また借りパクされた車を取り返すために、退役軍人を雇って追跡チームを結成した企業もある。