初めて部下を持った人にありがちな大いなる“誤解”

1.仕事をよくわかっているつもりになる

 初めて部下を持つようになると、ほとんどの人は錯覚する。「自分は仕事のレベルが高いから、役員や本部長、部長などから認められたのだ」というように。ところが、実はそうとは言えないことのほうが多い。そもそも、人事評価は相対的に決まるもの。社員の年齢、キャリア、性別、同世代の中での扱い、直属上司やその上の管理職たちからの評価、同僚や取引先、顧客などとの人間関係、さらに今後、伸びる可能性などを総合的に見て、判断されるものだ。言い換えると、仕事のレベルは依然として未熟であり、学ぶべきものが多いということもありうる。30代なら、まだベテランとは言えず、仕事で完全に一本立ちしているわけでもない。ところが、部下を持ってしまうと「自分はハイレベルな仕事ができる人間だ」と思い込んでしまう。これが、大きな勘違いだ。

2.期待されているつもりになる

 勘違いしてしまう人は、自分が社長、役員、本部長、部長などから「将来を有望視され、期待されている」と信じ込む人も多い。実は、これも勘違いなのだ。主任や課長補佐、課長などになるのは、人事のルーティンであり、多くの人がいずれどこかのタイミングでなるものだ。それが早いか遅いかの違いでしかない。課長になるのは20~30年前に比べると、難しくなっているとはいえ、特別に高いハードルともいえない。本当に期待されているのなら、20代後半から30代前半で、社内でも注目を浴びるポジションや仕事を与えられるものだ。そして、その期待も、何かの弾みで消えてしまうことがある。会社の人事とは、そのレベルのものでしかない。過剰な期待をしないことが肝要だ。

3.人格も認められていると思い込む

 部下を持つとなぜか、「人格まで認められた」と思い込む人がいる。これも勘違いだ。ほとんどの会社では、社員を昇格させる時、人格まで査定されることはない。人間関係においてトラブルがあまりにも多い人なら、何らかの検討が行われるかもしれないが、その可能性は低い。繰り返しになるが、前述のように、人事評価というものは、その社員の年齢、キャリア、性別、実績、上司などからの評価などを総合的にとらえ、相対的に評価し、判断していくもの。だからこそ、「人格が認められた」などと思い込むのは誤りであり、今後も謙虚な気持ちで、人格を磨き上げる努力を続けなければならない。

4.人事評価が正当なものだったと思い込む

 自分が選ばれた人事評価は、正しい判断にもとづくものだった、と思い込む人も多い。これもまた、勘違いだ。そもそも、その評価が「正しい」といえる根拠はない。人事評価とは、相対的に決まるものであり、そこには常に曖昧さがつきまとう。大学受験のようにペーパーテストの結果で、単純明快には判断ができないのだ。曖昧であるならば、上司が気に入っている人を高く評価することもありうる。恣意、主観による評価だ。それもまた、「悪い評価」とはいえない。「正しい」とか「悪い」とかといった判断基準はないのだから、そんなことはいえないのだ。


舞い上がることなく、冷静にきちんと現実を見据え、自分が足りないものを補う姿勢でいるべきだ。その控えめな姿勢があれば、部下たちの信頼を得ることができるはず。