電力

中部電力は28日、首都圏の利用者向けの新料金を発表した。

使用量の多い家庭が対象で、東京電力の新料金に比べ最大で3%程度割安になる。

 東電の顧客のうち、4.4%を占める使用量の多い家庭が対象。

一度に使える電力量を示す契約容量が15キロボルトアンペア、使用量が970キロワット時の家庭では、東電の現行料金に比べ最大5%程度、新料金と比較しても最大3%程度割安になる。

中部電のホームページで2月1日から受け付けるほか、首都圏に16店舗を持つ家電量販店「エディオン」が仲介する。

 これ以外では、都市ガス11社やインターネットプロバイダーの「ビッグローブ」を通じて、ガスやネット料金とのセット割販売を検討している。首都圏で計10万件の契約を目指す。

 一方の東電は、中部圏向けに、ソフトバンクなどの代理店を通じて、中部電の現行料金より最大5%程度割安になるプランを発表している。首都圏向けには四国電力が新料金の発表を検討をしているほか、東北電力も「いろいろな形で検討を進めている」(阿部俊徳東京支社長)と進出に意欲をみせている。【林奈緒美


見直しのメリットがより大きくなるのは、

月の電気料金が平均5000円超と使用量が多い家庭

新電力会社は、使用量が増えるごとに東京電力など従来の電力会社より「安くなる率」が高くなるように、設定している会社が多いため


全国どこでも従来の電気料金より5%安い料金プラン

登録申請中の「HTBエナジー」。親会社のハウステンボス株式会社

同社のグループ会社である旅行会社「エイチ・アイ・エス」は、旅行と電気の同時申し込みで旅行代金を割引くキャンペーンを3月末まで行う。


東電管内に限定すれば、ENEOSでんきは2年契約の場合、2人以上の世帯で東電よりも6~8%安くなる可能性がある他、「ENEOSカード」利用を条件にガソリンや灯油がリッター1円安くなるセット割引もある。

 大手石油元売りのJXエネルギーは「ENEOSでんき」として、KDDIと提携し、系列のガソリンスタンドでも契約できる。事前予約の「早割キャンペーン」を1月15日に開始しており、3年間で50万件が目標。料金を3段階に分け、5人家族以上の平均的なケース(40アンペア、月間使用量500キロワット時)は2年契約で現在の東電より年間約1万5000円安くなる。ただし、使用量が少ないケースは逆に高くなる場合もあるという。「エッソ」「モービル」などのブランドを展開する東燃ゼネラル石油は「myでんき」のブランドで参入した。


大阪ガスイーレックス

5%安い電気供給を目標に。4人家族なら約7500円安くなる。

 関西エリアで3人以上の世帯では「イーレックス」が関西電力に比べて6%前後安くなり、平均的な使用量の場合、3人世帯で年間7500円、4人世帯で1万円安くなる可能性がある。


電気料金とは別に、独自のサービスで話題を集めている会社もある。「スマ電」は、スーパーマーケットと提携し「スーパーの買い物ポイント付与」などのサービスを提供する。



東京ガス

電力とガスのセット購入で年4000~5000円安くなり、加えてネット接続の契約で年1万2000円程度安くなる。

「電気もはじめます。東京ガス」。4日に予約の受け付けを開始した東京ガスの販売店は、電力販売を告知するポスターを店頭に張って顧客を呼び込んでいる。東京ガスはテレビ広告にも力を入れ、専用のコールセンターには21日までに約8600件の問い合わせが寄せられた。1万件突破が視野に入るほどの人気ぶりという。

東京ガスは都市ガスとセットで、平均的な一戸建て3人家族の場合、東電の従来料金より4千~5千円節約できる。光回線を加えた「トリプル割」だと年2万円浮くという。

東京ガスは、電気とガスのセット契約をすることで料理サイト「クックパッド」の有料機能の一部を無料で利用できる




ソフトバンク東京電力

月の使用電力300kWhまでを定額に。それ以下の使用量なら未使用分をTポイントか携帯電話のデータ量として還元。契約期間の2年間で1万2000円安くなる。

 ソフトバンクは携帯電話とセットで月の使用量が300キロワット時までは定額にし、それを超えると割安になるのが特徴だ。使用量が月392キロワット時の場合、東電管内では最大2年間、年間約8920円お得になる。ただ3年目からは割引額が2400円縮小し約6520円になる。

 新プランへの切り替えの手続きは申し込むだけで完了する。ただ2年契約などの期間中に解約すると違約金が生じることもある。セット割引を選び、料金を滞納すると電気のほか、セット契約の携帯電話などが止められてしまうことも頭に入れておきたい。


東急電鉄

電気代を数%安くし、ケーブルテレビとのセット契約で月350円割引。定期券とのセット割も用意。事業開始後10年間で約50万世帯の契約を目指す。

 電鉄系では東京急行電鉄(東急)が100%子会社「東急パワーサプライ」を設立し、東電管内で電力を供給する。一戸建て4人家族のモデルケースでは、東電に比べ年間約9400円安い。同社は東急沿線の顧客向けに「定期券とセットの割引を検討中」という。同社は提携先の発電所や電力卸市場から電力を調達し、供給する。



三菱商事・ローソン】

電気使用料に応じPontaポイントが貯まる特典などを検討中。

 コンビニ大手ではローソンが三菱商事と組み、東電管内で電力を販売する。コンビニ業界で家庭向けの電力小売りに参入するのはローソンが初めて。「まちエネ」のブランドで、関東圏約4000のローソンの店頭やインターネットで2月から申し込みの受付を始める。料金プランなどは今後、明らかにする




◆電気代が安くできない「託送料金」のカラク

 実に多業種が参入し、その多くが他の商品との抱き合わせの「セット割引」で顧客獲得を目指している電力自由化。しかし電気料金単体では一気に1割引き、2割引きとはいかないようだ。

「多くの会社は、ほかの料金との抱き合わせ商法で安く見せているだけです。実は、自由化されても、電気代単体では絶対に安くできない理由があるんです。それは託送料金の存在です」と説明するのは、環境活動家の田中優氏。

「託送料金」とは発電事業者が、発電した電気を東京電力などの電力会社の送電線を使って送る場合、電力会社に支払う「使用料」だ。

「自由化といっても、自由化されたのは発電部門だけ。肝心の送電の自由化は’20年まで延ばされました。つまり、発電しても送電するのには電力会社の送電線を借りなければならない。そのために支払うのが『託送料金』です。1kW通すだけで、全国平均で約9円を支払わなければなりません」

 田中氏によると、発電するコストや電気を卸してもらうコストなどに1kWで約11円かかるので、新電力会社は必要経費だけで約20円を費やす。そして、現在の電気料金は1kWで約25円だ。

「つまり、電力会社と同じ料金で一般家庭に売っても、1kWで約5円の儲けにしかなりません。月300kWを使う家庭からでは1500円の利益しかない。数万世帯と契約しなければ、事務所の維持費や人件費、配当などを賄うことは不可能。これでは地域内の数百人や数千人が対象の小規模な新電力会社はやっていけません」

 福島第一原発の爆発事故を機に、エネルギーを県内で100%自給しようとの趣旨で設立された「会津電力」は、’14年10月から合計2.5MW(約800世帯分)の太陽光発電を行っているが、今回の自由化には参入しないという。

「自由化への参入はいつかはやりたいと思っています。でも現状では一般家庭への売電は利ザヤが小さすぎて、電気代がかなり高くなってしまう。ましてや、私たちは人員も施設も資金も限られています。今回は参入を見送ることにしました」(折笠哲也営業本部長)

 会津電力だけではない。全国には、一般市民からの投資で建設された数十もの市民風車が稼働しているが、そのほとんどすべてが「自由化には参入できない」と口を揃える。現時点で参入を表明しているのは、大阪市の「いずみ生協」と札幌市の「コープさっぽろ」など限られている。