桂歌丸が説く、ホメずに伸ばす若手指導法 「褒める人間は敵と思え」

桂歌丸が説いた「ホメずに伸ばす」若手指導法とは?


2016年5月22日 8時59分 ハーバービジネスオンライン
笑点』公式HPより 【石原壮一郎の名言に訊け】〜桂歌丸の巻

Q:後輩の指導方法に悩んでいます。自分が指導役を務めている新入社員は、仕事の覚えが悪くてヤル気もイマイチ感じられません。そのくせ、何かというと「ボク、ホメられて伸びるタイプなんです」とこっちをけん制してきます。そう言うならとなるべくホメるようにしているんですが、同じ失敗を繰り返すなどまったく伸びる気配がありません。どう指導すればいいんでしょうか。(愛知県・28歳・イベント企画)

A:朝ドラの「とと姉ちゃん」風に言うと「どうしたもんじゃろのう……」というところですね。徐々に世の中の共通認識になりつつありますが、自分で自分のことを「ホメられて伸びるタイプ」と言うヤツはロクなもんじゃありません。ホメても伸びないし、厳しく接するとすぐに逆恨みします。

 これを読んでいる学生の方は、社会に出たときに間違っても自分のことを「ホメられて伸びるタイプ」なんて言わないようにしましょう。若手社会人で、そう言ったら可愛がられるだろうと勘違いして自称してしまっている方は、今すぐ先輩や上司に「よく考えたら、自分は厳しくされて伸びるタイプでした」と訂正しておくことをオススメします。

 先日、桂歌丸師匠が50年間出演し続けた「笑点」からの引退を発表しました。本日5月22日放送の回が最後の出演だそうです。今回は、歌丸さんが弟子を指導するときに心がけてきた言葉から学ばせてもらいましょう。その新入社員が、今度「ボク、ホメられて〜」とぬかしやがったら、この言葉を返してみてください。

「褒める人間は敵と思え。教えてくれる人、注意してくれる人は味方と思え」

 ま、そいつが意味を理解できるかどうかはわかりませんが……。歌丸さんが中学生で噺家になってすぐに、師匠から言われた言葉だとか。師匠の言葉は、こう続きます。「若いうちに褒められると、そこで成長は止まっちゃう。木に例えれば、出てきた木の芽をパチンと摘んじゃうことになる。で、教えてくれる人、注意してくれる人、叱ってくれる人は、足元へ水をやり、肥料をやり、大木にし、花を咲かせ、実を結ばせようとしてくれている人間だって」。

 じつはホメるのは、指導する側にとっても楽な接し方です。注意したり叱ったりすれば、相手は反発したり腹を立てたりするでしょう。しかし、ホメておけば「いい先輩」と思ってもらえます。「叱られるのが苦手」な若者が増えていると言いますが、そんな若者たちを作っているのは、嫌われることを避けてちゃんと叱ることができない無責任な大人たちに他なりません。後輩の木の芽を摘まずに、水や肥料をあげて実を結ばせたいなら、厳しく接するのがいいんじゃないでしょうか。いや、不必要に威張る必要はありませんけど。

 ただ、歌丸さんは、こうも言っています。「二十歳を過ぎた人間にモノを教えることは何もない。二十歳になった人間は大人だ。二十歳を過ぎたら自分で気づくよりほかない」。仕事で一人前に育ってもらうための指導は大切ですが、「性根を叩きなおそう」「別人に生まれ変わらせよう」と思っても、それはきっと無理な話です。先輩という立場でできるのは「仕事に必要な具体的な知識や考え方を授けること」だけと言っていいでしょう。

 そうこうしているうちに、結果的に人間としての成長が見られることはもちろんあります。でもそれは指導した先輩の手柄ではなく、いろんな経験を経て本人が自分で気づいたから。先輩の分をわきまえて、「俺のおかげ」と思いたい甘い誘惑を振り切るのが、先輩としての大人の美学と言えるでしょう。それでも、深い感謝や強い絆といったものは生まれるときは生まれるので、寂しく思う必要はありません。


【今回の大人メソッド】
◆「相手のため」と思うと何かと厄介が増える

これもまた甘い誘惑ですが、後輩なり部下なりを指導する側は、つい「こいつのためにやっている」と恩を着せたくなります。そういう一面もあるにはありますけど、あくまで先輩や上司としての「役割」を果たしているだけ、ぐらいに思っておきたいところ。そのほうが自分にとっても相手にとっても、過剰な期待といった呪縛に振り回されずに済みます。