マッキンゼー 部下に「●●さん」と呼ばせる



 マッキンゼーで働く人たちにとって、肩書きはあくまで単なる「役割」に過ぎません。肩書きが違うことは、役割が違うことを意味しています。「偉いかどうか」は関係ないのです。


 まず、「肩書き」について。私が在職していた当時、マッキンゼーで働く人たちの肩書きは、大きく分けると上からパートナー、マネージャー、アソシエイト、ビジネスアナリスト、の4段階に分かれていました。

 パートナーとは役員のような位置づけ(共同経営者)に当たります。彼らのおもな仕事は、日本支社の経営と同時に、大口クライアントを獲得し、よい関係を保つことです。

 マネージャーは、個別のクライアントを担当し、プロジェクト全体を統括する中間管理職のような立場です。

 大学を卒業したばかりの新入社員は、まずビジネスアナリストという肩書きで、個別のプロジェクトで最も根本となるリサーチやデータ収集を行い、ときにはプレゼンテーションまでを任されます。そのなかでキャリアを積み、実績を上げた人がアソシエイト、マネージャーへと昇格していくわけです。

 こうしてみると、マッキンゼーも日本によくある会社とそれほど変わらない組織のように感じられるかもしれません。しかし、いわゆる日本企業とはかなり文化が異なります。

 マッキンゼーで働く人たちにとって、肩書きはあくまで単なる「役割」に過ぎません。肩書きが違うことは、役割が違うことを意味しています。「偉いかどうか」は関係ないのです。

 新入りのビジネスアナリストでも、経営者であるパートナーを「さん」付けで呼びます。

マッキンゼーに上下関係は存在しない!?

 マッキンゼーの上司たちは、決して自分の肩書きを誇ったり、立場に物を言わせて、強引に押し通したりはしませんでした。「上下関係」は、存在しなかったと言ってもいいくらいです。

 上司の役割を担う人は、よりバリューが出せるからこそ、そのポジションにいるのであって、自然と部下からはリスペクトを集めます。自分のチームやプロジェクト、ひいてはマッキンゼー日本支社のバリューを最大化するために、部下を励まし、刺激して力を引き出すことを最優先にしていました。

 お互いの評価の対象は、出したバリューだけ。 バリューを出している人が一目置かれ、リスペクトを集めます。 バリュー以外の要素には、だれも口出しをしません。 それがマッキンゼー流なのです。

 マッキンゼーには、部署やプロジェクトごとのチーム分けはあっても、派閥は存在しません。情で仕事をせず、親分、子分の関係は重視されません。すべてはバリューを出すために働くのです。

 もちろん、ときには直接バリューを出せなくとも、間接的に他人のバリューを高められる人が重用されるケースはありましたが、結局同じことです。

 いわゆる「ゴマすり」も、マッキンゼーには存在しません。本質的な仕事をしている組織では、肩書きはただの役割に過ぎないのです。